給料が安くて辞めたいとき、取れる手は「辞める」の一択ではありません。手取りを増やす手段は、大きく5つあります。 職場を変える・夜勤を増やす・資格をとる・科を変える・雇用形態を変える。まず、それぞれの手取り増加額の目安と、即効性・コストを一覧にしました。「今日どれを選べるか」の当たりをつけてから、辞めるかどうかを考えても遅くありません。
この記事でわかること:
- 辞める前に取れる給料アップ5手段の比較(手取り増加額の目安・即効性・コスト)
- 看護師の給料は本当に安いのか(令和6年の統計での位置)
- 「辞める/残る/働き方を変える」の3択で気持ちを整理する方法
辞める前に取れる給料アップ5手段(まず比較表)
急いでいる人向けに、まず5手段を手取り増加額の目安つきで並べます。金額はあくまで一般的な目安で、地域・施設・あなたの経験によって上下します。「自分に効きそうな手」を1〜2個見つけてください。
| 手段 | 手取り増加の目安(月) | 即効性 |
|---|---|---|
| 1. 職場を変える | 数千円〜5万円超 | 中 |
| 2. 夜勤を増やす | 1回1〜3万円×回数 | 高い |
| 3. 資格をとる | 職場次第(数千〜数万円) | 低い |
| 4. 科・部署を変える | 手当分(数千〜数万円) | 中 |
| 5. 雇用形態を変える | プラスにもマイナスにも | 中 |
それぞれ引き換えに払うコストがあります。職場を変えるなら環境の変化と退職金の積み直し、夜勤を増やすなら体力と生活リズム、資格は費用と時間、科・部署の変更は業務内容そのもの、雇用形態の変更は保障・安定性です。
見てのとおり、即効性が高い手ほど持続性が低く、持続する手ほど時間がかかります。夜勤を増やせばすぐ増えますが、やめれば消えます。職場や科を変えれば土台が変わりますが、環境の変化を引き受ける必要があります。だから正解は「一番いい手を1つ選ぶ」ことではなく、短期の上乗せと土台の引き上げを分けて、必要なら組み合わせることです。
なお、5手段の前提になる「基本給と手当はお金としての性質が違う」という構造は給料のしくみの記事で解説しています。手当は働き方を変えると消える収入、基本給は賞与・退職金まで波及する土台です。ここを押さえると、下の判断がぶれません。
そもそも看護師の給料は本当に安いのか
手段の前に、位置を確認します。「安すぎる」という前提のまま動くと、判断を誤るからです。
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査では、看護師の平均年収はおよそ520万円で、全産業の平均を上回ります。准看護師でも約417万円です。額そのものは、決して低い水準ではありません。
では、なぜ多くの看護師が「安い」と感じるのか。理由は主に3つあります。
- 負担との釣り合いが悪い: 夜勤・命に関わる緊張・不規則な生活という負担に対して、割が良くないと感じやすい
- 昇給カーブが緩い: 20代のうちは他業種より高いことも多いのに、経験を重ねても基本給が伸びにくく、30代以降で追い抜かれる感覚が出やすい
- 手当依存: 手取りの多くを夜勤手当が支えているため、夜勤を減らすと一気に下がる。「基本給が薄い」構造への不安が「安い」という言葉になる
つまり、多くの場合の不満は「額が異常に低い」ことではなく、「負担と釣り合っていない・伸びしろが見えない」ことです。ここを分けて考えると、打つべき手が変わります。負担を減らしたいのか、額を増やしたいのか、両方か。それによって5手段の優先順位が決まります。
手段1:職場を変える|給与テーブルごと変える
昇給を何年待っても、職場の給与テーブル自体が低ければ天井は変わりません。テーブルごと変えられるのは転職だけです。手取り増加の目安は、同じ職場タイプ内の移動で月数千円〜数万円、給与構造の違う領域(美容系クリニック・企業など)への移動なら月5万円以上動くこともあります。
ただし、年収が上がる求人には必ず「上がる理由」があります。夜勤・オンコールの負荷が重い、離職が多く採用を急いでいる、成果への要求が強い——理由を確認せずに額面だけで飛びつくのが、年収目的転職の典型的な失敗です。
- ×「今より月給が高いから応募する」
- ○「基本給・賞与実績・夜勤前提回数で比較し、上がる理由を確認してから応募する」
求人票は月給の総額でなく、基本給・賞与実績・夜勤の前提回数で読み比べてください。転職で年収を上げる正攻法の全体像は年収を上げる5つの正攻法の記事で詳しく整理しています。
手段2:夜勤を増やす|増やす前に「単価」を確認する
夜勤は看護師の収入の即効レバーですが、「回数を増やす」の前にやるべきことがあります。自分の夜勤1回あたりの実質単価を計算することです。
給与明細から「夜勤手当+深夜割増分」を夜勤回数で割れば、1回あたりの受取額が出ます。これを拘束時間で割ると時給換算が見えます。夜勤手当の水準は施設差が大きく、日本看護協会の病院看護実態調査で全国的な水準を確認できます。自分の単価が相場から大きく外れているなら、回数を増やす前に「単価の高い職場で同じ回数やる」という選択肢が浮上します。これは手段1と組み合わせる発想です。
回数を増やす場合は、上限を先に決めてください。収入のために夜勤を積み増した結果、体調を崩して長期離脱すれば、収支は簡単に逆転します。夜勤の負担構造との付き合い方は夜勤の働き方の記事で整理しています。夜勤手当そのものの読み方は手当の全体像の記事も参考になります。
手段3:資格をとる|手当規程を見てから決める
認定看護師・専門看護師・特定行為研修などの資格は「給料アップの手段」として紹介されがちですが、順序が逆です。先に自施設の資格手当の規程と支援制度を確認し、投資が回収できるかを見てから決めるのが正攻法です。
確認すべきは3点です。
- 手当額: 資格手当が月にいくらか。月数千円の職場も少なくなく、手当だけでの費用回収には長い年数がかかることがあります
- 支援制度: 学費補助・研修中の身分保障(在籍扱いか休職か)の有無。ここで自己負担額が桁で変わります
- 取得後の役割: 手当以外に、活動時間や役割・ポジションが用意されるか
資格は「即効の給料アップ策」ではなく「キャリアの方向づけ」です。進みたい分野と一致して初めて投資が生きます。要件や費用は必ず日本看護協会の公式情報で確認してください。