履歴書の志望動機欄で手が止まるのは、文章力の問題ではありません。「なぜこの職場なのか」がまだ言葉になっていないだけです。この記事は、まずあなたの応募先に近い職場タイプの例文を先に並べます。理屈(経験→接点→展望の型)や履歴書の基本は後半に置いたので、締め切りが近い人は近いタイプの例文を1本選び、それを下敷きに自分の言葉へ置き換えていってください。
この記事でわかること:
- 職場タイプ別の志望動機の例文6本(急性期・回復期・クリニック・訪問看護・介護施設・ブランク明け)
- 例文を自分の言葉に変える「経験→接点→展望」の型と、接点の作り方
- 志望動機が書けないときに見直すべき、転職の前提そのもの
職場タイプ別:そのまま下敷きにできる志望動機の例文6本
例文はすべて架空の設定です。文章そのものを写すのではなく、自分の応募先に近いタイプを1本選び、下敷きとして自分の経験に置き換えてください。各例文の末尾に「置き換えのポイント」を付けました。分量はいずれも200〜300字、記入欄の8割程度を目安にしています。
例文1:急性期病院(スキルを積みたい3年目)
現在、消化器外科病棟で3年間、周術期の看護を経験してまいりました。患者さまの回復過程を支える中で、より重症度の高い患者さまへの看護を学びたいという思いが強くなりました。年間の救急受け入れ件数が多く、段階別の教育体制を整えていらっしゃる貴院であれば、これまでの経験を土台に急性期看護を深められると考え、志望いたしました。将来的には後輩指導にも携わり、病棟全体の看護の質向上に貢献したいと考えております。
置き換えのポイント: 「学びたい」だけで終わらせず、最後に貢献の視点を置くと「教わる気満々の人」という印象を避けられます。〔3年間〕〔診療科〕を自分の数字に替えてください。
例文2:回復期・慢性期(急性期からの転向)
急性期病棟で4年間勤務し、治療の初期を支える看護にやりがいを感じる一方、退院後の生活を見据えた関わりに時間を割けないことにもどかしさを感じてまいりました。多職種との連携を重視し、退院支援に力を入れていらっしゃる貴院で、患者さまが生活に戻る過程を支える看護に取り組みたいと考え、志望いたしました。急性期で培った変化への気づきを、回復期の看護にも活かしてまいります。
置き換えのポイント: 領域を変える転職では「前の領域が嫌になった」ではなく「前の領域で気づいた大切にしたいこと」を軸にすると一貫性が出ます。
例文3:クリニック(生活リズムを整えたい)
総合病院の内科病棟で5年間勤務してまいりました。夜勤を含む交代制の中で経験を積んでまいりましたが、今後は生活リズムを安定させ、長く働き続けられる環境で、地域の患者さまと継続的に関わりたいと考えるようになりました。かかりつけとして長く通われる患者さまの多い貴院で、病棟で培った対応力を活かし、安心して受診いただける環境づくりに貢献したいと考え、志望いたしました。
置き換えのポイント: クリニック志望で夜勤の話題を避ける必要はありません。「長く働き続けるため」という文脈に載せれば、条件目当てではなく定着意欲として伝わります。クリニック転職の選考の特徴はクリニック転職の記事で詳しく扱っています。
例文4:訪問看護(じっくり関わりたい)
病棟で6年間勤務する中で、退院される患者さまを見送るたびに、ご自宅での生活を支える側に回りたいという思いが強くなりました。24時間体制で地域の在宅療養を支え、同行訪問など未経験者への教育体制を整えていらっしゃる貴ステーションで、お一人おひとりの生活に寄り添う看護を実践したいと考え、志望いたしました。前職で培った病状変化への気づきを、在宅の場でも活かしてまいります。
置き換えのポイント: 訪問看護では「1人で判断する場面への覚悟」を見られます。教育体制への言及は、その不安を自覚して準備している姿勢の表明にもなります。働き方の実際は訪問看護の記事を参照してください。
例文5:介護施設(生活を支えたい)
これまで療養病棟で4年間、長期療養中の患者さまの看護に携わってまいりました。医療の場よりも生活の場で、ご入居者さまの毎日を支える看護がしたいという思いから、介護職の皆さまとの協働を大切にされている貴施設を志望いたしました。療養病棟で培った多職種連携の経験を活かし、ご入居者さまとご家族に安心していただける体制づくりに貢献してまいります。
置き換えのポイント: 「医療から生活へ」という関わり方の変化を軸にすると、病棟からの転向でも動機がぶれません。介護施設は看護師が少数で判断を担う場面も多く、その体制への理解を示すと好印象です。
例文6:子育て中・ブランク明け(日勤のみ希望)
出産を機に退職し、3年間子育てに専念してまいりました。子どもの生活が安定してきたことから、看護師として再び働きたいと考えております。ブランクのある看護師の復職支援に取り組み、日勤帯の勤務体制を整えていらっしゃる貴院であれば、家庭と両立しながら着実に感覚を取り戻し、長く貢献できると考え、志望いたしました。
置き換えのポイント: ブランクや勤務条件の希望は隠さず、「だから長く働ける」という定着の根拠に変換します。日勤のみで働く選択肢の全体像は日勤のみの働き方の記事にまとめています。
この6本を、かっこを自分の情報に替えるだけで使える穴埋め下敷きとして、記事末尾のフォームからメールでお送りしています。応募先に近い1本を選ぶ形で使ってください。
志望動機は「経験→接点→展望」の3段で組み立てる
ここからは、上の例文がなぜこの形なのかの理屈です。例文をそのまま下敷きにする人は読み飛ばして構いませんが、自分の言葉に置き換える段で必ず効いてきます。
看護師の志望動機は、次の3段で組み立てると論理がつながります。
| 段 | 書く内容 |
|---|---|
| 経験(3割) | これまでどの領域で何を経験し、何を大切にしてきたか |
| 接点(4割) | その経験・価値観と応募先の特徴がどこで重なるか |
| 展望(3割) | 入職後にどう貢献し、どう成長したいか |
多くの志望動機が通らないのは、真ん中の「接点」が抜けているからです。「貴院の理念に共感し」だけでは、どの施設にも送れる文章になってしまいます。応募先の職場タイプ・診療領域・体制のうち、自分の経験と具体的に重なる一点を見つけることが、志望動機作成の実質的な作業のすべてです。上の6本の例文が説得力を持つのも、すべてこの「接点」を1つに絞っているからです。
分量は200〜300字、記入欄の8割程度が目安です。埋まらない場合は文章を飾るのではなく、「接点」の材料集め(応募先の情報収集や見学)に戻ってください。
履歴書の基本:採用担当が最初に見る3つのポイント
志望動機の前に、履歴書全体で確認されるポイントを押さえます。
- 職歴の期間と正確さ: 在職期間は年月まで正確に書きます。短期間の離職が複数ある場合、書類上で隠すことはできないため、面接で説明できるよう理由を先に整理しておきます
- 資格欄: 「看護師免許 取得」のように正式名称で書きます。認定資格や研修の修了歴も、応募先の業務に関係するものは記載します
- 丁寧さと使い回し感: 誤字脱字、施設名の誤記は、それだけで評価を下げます。病院あてには「貴院」、施設・訪問看護あてには「貴施設」「貴ステーション」と書き分けます。前の応募先の名残が残った書類は、使い回しの何よりの証拠になります
手書きか作成ソフトかは、指定がなければどちらでも構いません。手段より、読みやすさと正確さが重要です。
書く前の準備:3つの問いに答えてから書く
例文を下敷きにしても言葉が浮かばないときは、書き始める前に次の3つの問いへの答えをメモにします。
- なぜ今の職場を離れるのか: 不満の裏返しではなく、「何を変えたいのか」まで言語化します。ここが曖昧なままだと、志望動機も曖昧になります。気持ちの仕分け方は辞めたい気持ちを整理する記事の手順が使えます
- なぜその職場タイプなのか: 病棟・クリニック・訪問看護・介護施設では、求められる動き方がまったく違います。「なぜ病棟ではなく訪問看護か」に自分の言葉で答えられる状態にします
- なぜその施設なのか: 同じタイプの中でその施設を選ぶ理由です。診療領域、教育体制、地域での役割など、見学や公開情報から具体的な接点を拾います
この3つが埋まれば、志望動機は「例文の下敷きに、自分の答えを並べて整えるだけ」になります。逆に1つ目の問いに答えられない場合、転職のタイミング自体を再考する余地があります。転職は何年目がベストかの記事の判断基準もあわせて確認してください。