看護師の退職金相場を調べても、自分がいくらもらえるかはほとんどわかりません。退職金は職場の制度、勤続年数、基本給、退職理由で大きく変わるからです。先に結論を言うと、退職金で最初に見るべきなのは平均額ではなく、退職金規程の支給条件・算定方式・自己都合の扱い・支給時期です。
この記事でわかること:
- 看護師の退職金相場を平均額だけで判断してはいけない理由
- 退職金規程で確認する4つの項目
- 退職時期を決める時に、退職金をどう判断材料に入れるか
結論:退職金相場は「規程」を読まないとわからない
退職金は、法律で必ず支給が義務づけられている制度ではありません。職場に退職金制度がある場合、その内容は就業規則や退職金規程で決まります。つまり、相場記事の平均額より、自分の職場の規程が優先です。
最初に確認する項目は次の表です。
| 確認項目 | 見ること |
|---|---|
| 支給条件 | 勤続何年以上で対象か。不支給条件はあるか |
| 算定方式 | 基本給連動、ポイント制、外部積立など、どの型か |
| 退職理由 | 自己都合、定年、会社都合で支給率が変わるか |
| 支給時期 | 退職後いつ振り込まれるか |
| 勤続節目 | 支給率が上がる年数の節目があるか |
退職金の基本構造は看護師のボーナス・退職金のしくみでも扱っています。本記事では、特に「相場をどう読むか」と「退職前に規程をどう確認するか」に絞ります。
平均額が自分の退職金にならない理由
退職金相場の記事では、勤続年数別に目安額が示されることがあります。参考にはなりますが、その数字を自分の退職金として使うのは危険です。理由は4つあります。
第一に、退職金制度がない職場もあります。制度がなければ、相場がいくらでも自分には支給されません。
第二に、算定方式が違います。基本給に勤続年数別の支給率をかける職場もあれば、ポイント制や中小企業退職金共済など外部積立を使う職場もあります。同じ勤続10年でも、方式が違えば金額は変わります。
第三に、自己都合退職かどうかで変わります。多くの規程では、自己都合退職は定年退職より支給率が低く設定されます。転職目的の退職は自己都合になることが多いため、相場より低くなる可能性があります。
第四に、基本給が効きます。月給が高く見えても手当込みで、基本給が低い職場では退職金が伸びにくいことがあります。給料の土台は看護師の給料のしくみを参照してください。
退職金の3つの算定方式
退職金規程で出てきやすい方式を、3つに分けます。
| 方式 | 計算の考え方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 基本給連動型 | 退職時の基本給×勤続年数別支給率×退職事由係数 | 基本給が低いと伸びにくい。自己都合係数を確認 |
| ポイント制 | 勤続、役職、評価などのポイント累計×単価 | 規程を読まないと自分で計算しにくい |
| 外部積立型 | 中退共や企業年金・確定拠出などに積み立て | 掛金、加入期間、受け取り手続きを確認 |
どの方式が良いかは一概に言えません。大事なのは、自分の職場がどの方式で、退職時点の自分にどう適用されるかです。規程を読んでもわからない場合は、人事・総務に「自己都合で退職した場合の計算方法を確認したい」と聞いて構いません。これは退職の意思表示ではなく、制度確認です。
退職金規程で見る4項目
退職金規程を開いたら、次の4項目だけでも確認してください。
1. 最低勤続年数
「勤続◯年以上で支給」と書かれている場合、その年数未満では不支給です。たとえば勤続3年以上が条件なら、2年11か月で辞めると対象外になる可能性があります。退職時期が数か月で調整できるなら、ここは重要です。
2. 自己都合退職の支給率
転職や自己都合退職では、支給率が低くなる規程があります。定年退職の表と自己都合退職の表が分かれている場合もあります。相場記事を見る時も、自分がどの退職事由に当たるかを考えてください。
3. 算定基礎
基本給を使うのか、別テーブルを使うのか、ポイントを使うのかを確認します。月給ではなく基本給を使う職場が多いため、夜勤手当や住宅手当で月給が膨らんでいても、退職金には反映されないことがあります。
4. 支給時期
退職後いつ振り込まれるかを確認します。退職直後の生活費、転職までの空白期間、引っ越し費用に関わるためです。退職金をあてにした資金計画を立てるなら、支給日が不明なまま進めないでください。
勤続年数の節目をどう見るか
退職金制度では、勤続年数が長くなるほど支給率が上がる設計が一般的です。特に、最低勤続年数を超える直前、支給率が大きく上がる節目前後では、退職時期の数か月差が金額に影響することがあります。
ただし、「節目まで我慢すべき」とは限りません。ここで大事なのは、増える退職金額と、その期間働き続ける負担を分けて考えることです。退職金が10万円増えるために、心身の負担が大きい環境で1年残るのが合理的かは、人によって違います。眠れない、食べられない、出勤前に涙が出るなどのサインがある場合は、退職金より健康を優先し、産業医・医療機関・院内相談窓口へ相談してください。
退職時期は、退職金だけでなく賞与の支給日在籍要件、有給休暇、引き継ぎ、次の職場の入職日も関わります。転職タイミング全体は看護師の転職は何年目がベスト?も参考になります。
ケーススタディ:勤続節目前で迷った例
架空の例です。病棟8年目の河合さんは、転職を考えていました。退職金規程を見ると、勤続8年を超えると支給率が少し上がることがわかりました。今すぐ辞める場合と、あと4か月残る場合では、退職金に約15万円の差が出る見込みです。
河合さんは、15万円だけを見て残るか決めませんでした。次の職場の入職時期、今の職場での夜勤回数、賞与支給日、有給消化の可否を合わせて見ました。結果として、4か月待つことで賞与も受け取れ、次の職場の入職時期にも合うことがわかったため、退職時期を調整しました。
別の状況なら、答えは変わります。もし今の職場で強い消耗があり、健康面のサインが出ているなら、15万円のために残る判断は適切ではないかもしれません。退職金は大事ですが、判断材料の一つです。