「看護師は大卒と専門卒で給料がどれだけ違うのか」——進路を決めるときに一番気になる問いに、先に数字で答えます。新卒の初任給の差は、月8千円弱です(日本看護協会の2024年調査、税込給与総額ベース)。想像より小さいと感じた人が多いはずです。そして、この差はその後の働き方で縮んだり逆転したりします。まず学歴別の初任給を表で示します。
この記事でわかること:
- 大卒・専門卒(3年)・准看ルートの初任給の実額と差(出典・年次つき)
- 差はどこで生まれ、どこで縮む・逆転するのか
- 給料以外も含めた、進路の判断の軸
看護師の給料は大卒と専門卒でどう違う?初任給・給料の比較
まず、新卒看護師の初任給を学歴別に比べます。出典は日本看護協会「2024年 病院看護実態調査」(2024年10〜11月調査)です。
| 学歴 | 新卒の初任給(2024年調査) |
|---|---|
| 高卒+3年課程(専門卒3年) | 基本給与 約209,697円/税込給与総額 約276,127円 |
| 大卒 | 基本給与 約215,614円/税込給与総額 約284,063円 |
税込給与総額の差は約7,936円(月8千円弱)、基本給与額の差は**約5,917円(月6千円弱)**です。ここでの税込給与総額には通勤・住宅・家族・夜勤・当直などの手当が含まれ(時間外手当は除く、新卒は家族手当を含まず単身・民間アパート居住を前提とした集計)、条件をそろえた比較になっています。
ポイントは、初任給の段階での学歴差は比較的小さいということです。「大卒だと大幅に高い」わけでも、「専門卒だと大きく損」でもありません。この小さな初任給差が、その後どう動くかを次の章から見ていきます。なお、この記事は学歴による優劣づけをする意図はありません。あくまで進路判断の材料として、数字を正確に見るためのものです。
初任給の差の実額:日本看護協会2024年調査から
もう一度、差の意味を確認します。月8千円弱の差を12か月で見ると年間で約10万円弱です。大学は専門学校(3年)より在学期間が1年長く、学費もかさむのが一般的なので、初任給の差だけで大学の追加費用を回収しようとすると、単純計算では相応の年数がかかることになります。
だからといって「専門卒が得」と結論づけるのも早計です。理由は2つあります。
- 差は初任給で固定されるわけではなく、昇給ペースや役職で開くこともある(後述)
- 大卒には給料以外のメリット(保健師・助産師の受験資格、昇進・大学院への道)がある(後述)
つまり、初任給の実額は「学歴差は思ったより小さい」という出発点であって、そこから先は昇給・役職・働き方・キャリアの広がりまで含めて見ないと、損得は判断できません。給料そのものの構造は給料のしくみの記事で、基本給・手当・夜勤の内訳に分解しています。
差はどこで生まれるのか:基本給と昇給ペース
学歴差が最も出やすいのは、基本給の初期値と、その後の昇給ペースです。
一般に、大卒は基本給の初任額がやや高く設定される傾向があり、そのぶん定期昇給の積み上がりも土台が高くなりやすい構造です。また、管理職(主任・師長)への登用や、教育・研究に関わるポジションで、大卒・大学院卒が優先されやすい職場もあります。長期間で見ると、この昇給ペースと役職の差が積み重なって、生涯賃金の差につながることがあります。
参考として、全産業・全年齢の学歴別の賃金水準を見ると、学歴によって賃金カーブに差があることが分かります。
| 学歴(全産業・男女計) | 所定内給与額(令和6年賃金構造基本統計調査) |
|---|---|
| 高校 | 約288.9千円 |
| 専門学校 | 約306.9千円 |
| 大学 | 約385.8千円 |
ただし、この表は看護師に限った数字ではなく、全産業をならした学歴別の賃金です。看護師は資格に基づく専門職で、賃金の決まり方が一般の会社員とは異なります。看護師の世界では、この全産業の学歴差ほど大きな差は出にくく、次章で見る「学歴以外の要素」のほうが給料への影響が大きい場面が多くあります。全産業のカーブは「学歴で賃金カーブは変わりうる」という背景として押さえるにとどめてください。
差はどこで縮む・逆転するのか:夜勤・施設・経験年数
ここが、この記事で一番伝えたい部分です。看護師の給料は、学歴以外の要素で大きく動きます。そのため、初任給の学歴差は、働き方次第で簡単に縮み、逆転もします。
学歴より給料への影響が大きい要素は次のとおりです。
- 夜勤の有無・回数: 夜勤手当は収入への影響が大きい。夜勤の多い専門卒が、日勤中心の大卒より月収が高くなることは普通にある
- 施設タイプ・地域: 都市部の大病院と地方のクリニックでは水準が違う。都道府県による差も大きい(給料ランキング都道府県別の記事参照)
- 経験年数: 専門卒は大卒より1年早く働き始めるため、同じ暦年で見ると経験年数で1年先行する
- 役職・資格手当: 主任・師長への登用や、認定・専門などの資格手当
たとえば、専門卒で夜勤をしっかり担い、経験年数を先に積んで早めに主任になった人が、日勤中心で働く大卒より生涯賃金が上回ることは十分あり得ます。逆に、大卒で管理職・専門資格の道に進んで役職給・手当を積み上げれば差が開くこともあります。要は、学歴は出発点の小さな差にすぎず、その後の働き方と職場選びが給料を決めるということです。年収の上げ方の全体像は年収を上げる正攻法の記事にまとめています。
准看護師ルートも入れて比較する
学歴と給料を考えるなら、准看護師ルートも比較に入れておくと視野が広がります。准看護師は、一般に基本給・生涯賃金ともに正看護師より低めの傾向があります。これは、准看護師が都道府県知事免許で、業務も医師・看護師の指示のもとで行う位置づけであるためです。
一方で、准看護師には中学卒業から目指せて、学校は2年、費用の負担が小さいという利点があります。早く現場に入って収入を得ながら、働きながら正看護師にステップアップする道もあります。「学歴・費用のハードルを下げて入り、あとから正看へ伸ばす」という選び方は、進路の一つの現実解です。准看から始めるルートの全体像は准看護師のなり方の記事で、入学資格・期間・費用・正看へのステップアップまで整理しています。
給料だけで並べると准看<専門卒<大卒の傾向になりますが、費用・期間・入りやすさ・その後の伸ばし方まで含めて比べると、どのルートが自分に合うかは人によって変わります。