「看護師の平均年収は結局いくらなのか」——先に数字で答えます。厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査をもとにすると、看護師の平均年収は約519.7万円です。ただし、この平均だけを見て「自分は低い」と落ち込むのは早計です。年代・雇用形態・夜勤の有無で幅が大きいからです。まず年代別・雇用形態別の実数を表で示し、そのあとで「平均に惑わされない見方」を整理します。
この記事でわかること:
- 看護師の平均年収(全国平均)と年代別・雇用形態別の実数(令和6年調査)
- 中央値・手取り・夜勤依存という、平均に惑わされない3つの見方
- 正看護師と准看護師、男女別の年収差の読み方
看護師の平均年収はいくら:全国平均と年代別・雇用形態別
出典は厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(2024年調査)です。年収は「きまって支給する現金給与額×12か月+年間賞与その他特別給与額」で算出され、夜勤手当などを含みます。まず全体像を数字で示します。
- 全国平均: 約519.7万円
- 准看護師の平均: 約417万円(正看との差 約100万円)
- 男女別: 男性 約534万円/女性 約517万円
約519.7万円という数字は、全国のすべての看護師をならした平均です。ここで押さえたいのは、平均は「真ん中の人の年収」ではないということ。年代・地域・施設・夜勤の有無で大きく幅があり、平均はそれらを全部まとめた1つの代表値にすぎません。20代前半の人と50代の管理職を同じ土俵でならせば、平均は実感より高く見えることがあります。
だからこそ、自分の年収が平均より上か下かだけで一喜一憂する必要はありません。次の章から、年代別の実数と、平均を正しく読むための3つの視点を順に見ていきます。地域による差は給料ランキング都道府県別の記事で詳しく扱っているので、住む場所での比較はそちらを参照してください。
年代別に見る看護師の平均年収
看護師の年収は、年代でかなり動きます。令和6年賃金構造基本統計調査をもとにした目安は次のとおりです。
| 年代 |
平均年収の目安(令和6年) |
| 20〜24歳 |
約427万円 |
| 30代 |
500万円超 |
| 50〜54歳(ピーク) |
約582万円 |
20代前半は約427万円で、全国平均の519.7万円を下回ります。これは自然なことで、経験年数が浅く役職もついていないためです。30代に入ると500万円を超え、50代前半で約582万円のピークを迎えます。年齢とともに上がるのは、経験年数の積み上がりに加えて、主任・師長などの役職がついてくることが理由の一つです。
ここからわかるのは、「平均より低い=給料が安い職場」ではないということです。20代なら平均を下回っていて当たり前で、経験を積むにつれて上がっていくのが一般的な形です。自分の年収を評価するなら、全体平均ではなく同じ年代・同じ条件と比べるのが正確です。給料が何で上がっていくのか(基本給・手当・夜勤)の構造は給料のしくみの記事で分解しています。
正看護師と准看護師の年収差
雇用形態というより資格の違いですが、正看護師と准看護師では年収に差があります。令和6年賃金構造基本統計調査をもとにすると、看護師(正看護師)が約519.7万円、准看護師が約417万円で、差はおよそ100万円です。
准看護師の年収が低めの傾向にあるのは、准看護師が都道府県知事免許で、業務も医師・看護師の指示のもとで行う位置づけであるためです。基本給・生涯賃金ともに正看より低めになりやすい構造です。
ただし、この差だけで「准看は損」と決めつけるのは早計です。准看護師は中学卒業から目指せて、費用・期間の負担が小さいという利点があります。働きながら正看護師にステップアップする道もあり、「入りやすい入口から始めて後で伸ばす」という選び方もできます。准看から正看までのルートは准看護師のなり方の記事で、進路そのものの選び方は看護師の資格ルートの記事で整理しています。
平均に惑わされない見方1:中央値という視点
ここから、平均を正しく読むための視点を3つ示します。1つ目は「中央値」です。
まず正直に書きます。看護師の年収の「中央値」を示す公的な統計は、公表されていません。よく引用される約519.7万円は、賃金構造基本統計調査の「平均値」です。ネット上には「中央値は約500万円」といった記述もありますが、これは公的統計の数値ではなく推計にとどまります。
なぜ中央値の話をするかというと、平均値は一部の高収入層に引っ張られて、実感より高く出ることがあるからです。たとえば管理職や夜勤の多い一部の人が平均を押し上げると、多くの人が「平均に届いていない」と感じます。これは珍しいことではありません。
だから、平均を見て「自分は低い」と落ち込む必要はありません。大切なのは、平均を絶対の基準にせず、自分の年代・地域・夜勤の条件をそろえて比べることです。平均はあくまで全体像をつかむ出発点として使ってください。
平均に惑わされない見方2:額面と手取りの差
2つ目の視点は「手取り」です。統計や求人に出てくる年収は、**額面(税・社会保険料が引かれる前の金額)**です。実際に使えるお金はここから減ります。
- 額面の年収から、所得税・住民税・社会保険料が引かれる
- 手取りは額面のおおむね75〜80%程度が目安
- 額面500万円なら、手取りは年およそ380〜400万円前後
「平均519.7万円」と聞くと高く感じますが、手取りにするとおよそ400万円前後。ここに家賃や生活費がかかると、実感はさらに変わります。手取りが少なく感じる仕組み(額面と社会保険の関係)は、給料の構造として理解しておくと、明細を見たときのもやもやが減ります。実際の手取りは扶養の有無や各種控除で変わるため、生活の実感で考えるときは必ず手取りベースで見てください。手当がどう年収に効くかは手当の全体像の記事、賞与の扱いはボーナス・退職金の記事で確認できます。
平均に惑わされない見方3:夜勤依存という実態
3つ目の視点は「夜勤依存」です。看護師の平均年収がほかの職種と比べて高めに見える背景には、夜勤手当が年収を押し上げているという実態があります。
つまり、平均519.7万円という数字には、月に複数回の夜勤をこなして得ている手当が含まれています。日勤のみで働く人や、夜勤の少ない職場の人は、同じ看護師でも平均を下回ることがあります。これは給料が安いのではなく、夜勤の有無・回数で年収が大きく変わるという看護師特有の構造です。
この視点が大事なのは、年収を上げようとして安易に夜勤を増やすと、健康とのトレードオフが生じるからです。夜勤は収入への影響が大きい一方、生活の不規則さや体への負担も大きい。「平均に届かせるために夜勤を増やす」ではなく、「自分の生活と体調で持続できる働き方」を軸に考えてください。年収を上げる正攻法(夜勤・資格・役職・転職)の全体像は年収を上げる5つの正攻法の記事にまとめています。2026年時点の賃上げの動向は給料は上がるのかの記事で整理しています。
男女別の年収差をどう読むか
令和6年賃金構造基本統計調査をもとにすると、男性看護師が約534万円、女性看護師が約517万円で、男性がやや高い傾向があります。ただし、この差を「性別による差」と単純に読むのは正確ではありません。
差の背景には、夜勤を多く担う人の割合や、勤続年数・役職の分布といった条件の違いが影響していると考えられます。性別そのものより、夜勤・勤続・役職といった働き方の違いが年収に表れていると見るのが実態に近いです。男性看護師のキャリアの活かし方は男性看護師の転職の記事でも扱っています。年収を比べるときは、性別の平均差に注目するより、自分と近い条件(年代・夜勤・役職)の人と比べるほうが有益です。
平均年収でよくある誤解
平均年収の数字は、読み方を誤ると不安や誤解を生みます。×→○で整理します。
- ×「平均519.7万円が真ん中の人の年収」: 平均は全体をならした代表値で、高収入層に引っ張られる。→○平均は出発点、自分は同条件で比べる
- ×「中央値は約500万円だ」: 中央値の公的統計は公表されていない。→○推計と公的値を区別し、平均を絶対視しない
- ×「平均年収=手取り」: 統計・求人の年収は額面。→○手取りは額面の75〜80%程度で見る
- ×「平均より低い=安い職場」: 20代や日勤中心なら平均を下回って当然。→○年代・夜勤の条件をそろえて評価する
- ×「平均に届かせるため夜勤を増やす」: 健康とのトレードオフがある。→○持続できる働き方を軸に年収を考える
共通するのは、平均という1つの数字を絶対の基準にしないことです。看護師の年収は年代・地域・夜勤・役職で大きく幅があり、平均はその全体をならしただけの目安です。自分の位置を知りたいなら、同じ条件の人と比べるのが正確です。
自分の年収を平均と正しく比べる手順
平均に振り回されないために、自分の年収を評価する具体的な手順を示します。全国平均と単純に引き算するのではなく、条件をそろえて見てください。
- 自分の額面年収を出す: 直近1年の給与総額(基本給+手当)+賞与を合計します。求人と比べるときも額面同士でそろえます
- 同じ年代の目安と比べる: 全国平均519.7万円ではなく、自分の年代の目安(20代前半なら約427万円など)と比べます
- 夜勤の条件をそろえる: 自分の夜勤回数が多いか少ないかを踏まえます。夜勤が少なめなら平均を下回って当然です
- 地域を踏まえる: 都市部と地方では水準が違います。住む地域の相場は都道府県別ランキングの記事で確認します
- 手取りに直して生活実感で見る: 額面の75〜80%を目安に手取りを出し、生活費と照らします
この5ステップで見ると、「平均に届いていない」の多くは、年代・夜勤・地域の条件が違うだけだと分かることが多いです。そのうえで、条件をそろえても低いと感じるなら、働き方や職場を見直す段階に進みます。比較の土台をそろえることが、正確な自己評価の第一歩です。
ケーススタディ:十河さんの年収の見方
架空の例です。十河さん(26歳)は、地方の病院で働く4年目の看護師です。ネットで「看護師の平均年収は約520万円」と見て、自分の年収がそれに届いていないことに落ち込んでいました。
十河さんはまず年代別の数字を確認しました。20代前半の平均は約427万円で、20代なら全国平均を下回るのは自然だと分かり、少し安心しました。次に、平均は額面であり手取りは75〜80%程度であること、そして平均には夜勤手当が多く含まれていることを知りました。「自分は夜勤が少なめの部署だから、平均より低く出るのは当たり前だった」。
十河さんは、平均という1つの数字に振り回されるのをやめました。代わりに、自分の年代・地域・夜勤条件の近い相場を意識し、年収を上げたいなら夜勤・資格・役職・転職のどれを動かすかを、生活と体調を踏まえて選ぶことにしました。「平均に届いていないと落ち込むより、自分の条件で何を変えられるかを考えるほうが前に進めた」。数字の読み方が変わった一例です。
まとめ:平均は出発点、幅と手取りで読む
- 看護師の平均年収は約519.7万円(厚労省 令和6年賃金構造基本統計調査、額面・夜勤手当含む)
- 年代で大きく動く。20代前半は約427万円、50代前半で約582万円がピーク。20代で平均以下は自然
- 中央値の公的統計は公表されていない。平均は高収入層に引っ張られるので絶対視しない
- 年収は額面。手取りは額面の75〜80%程度(500万円なら年380〜400万円前後)
- 正看と准看の差は約100万円。男女差は性別よりも夜勤・勤続・役職の違いが背景
- 平均に届かせるため夜勤を増やすより、持続できる働き方を軸に年収を考える
次の一歩は、平均という1つの数字ではなく、自分の年代・地域・夜勤条件で比べ直すことです。地域差は都道府県別ランキングの記事、上げ方は年収を上げる正攻法の記事、給料の決まり方は給料のしくみの記事で深掘りできます。統計は年次で更新されるため、数字を使うときは何年の調査かを必ず確認してください。